これからの日常に向けて提案していくシリーズ「New Normal -コロナ後のまちと住宅とオフィス」を始めます。【こちらは全国のR不動産共通のコラムです】
変容の中から描き出す未来
新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が出され、皆がステイホームな日々を過ごしている頃、私たちの仲間であり、建築家・近畿大学准教授の宮部浩幸が「これからの街・住宅・オフィス」のあり方についてfacebookに投稿しました。
「新型コロナへの対応でテレワークに可能性を見いだせた人や企業は多いのではないでしょうか。僕もその一人です。さらに取引先にでかけていかなくてもいいし、来てもらわなくてもいい打ち合わせがたくさんあったことが判明してきています。大学の講義も制約はあるものの家に居ながらできるようになりました。良いこともある反面、家ではテレビ会議やオンライン授業に気を使って音を立てないように家族が気を使って疲れています。そんなことがたくさんの人に起これば、これからの住宅やオフィスにも変化がありそうです。どこでどのように住み、働くのかの意識の変化はまちにもじわじわと影響を与えると思います。ステイホームしながら同僚や教え子たちと建築やまちのことを話す中で考えたことを『まち』『住宅』『オフィス』にわけて書き留めてみました。」(以下略)-2020.5.20-
この投稿を皮切りに、私たちR不動産の関係者の間で「コロナ後のまちと住宅とオフィス」についての会話が活発に交わされるようになりました。
早速、オンラインを使って、近畿大学の宮部浩幸研究室、東京R不動産のディレクター馬場正尊が率いる設計事務所OpenA、東北芸術工科大学の馬場研究室をつないだ共同のゼミも立ち上がりました。都会と地方では発想も違います。今後いろんなエリア・環境から新しい暮らし・働き方についての多様な提案が立ち上がっていくと思いますが、まずは第一弾として東京R不動産で掲載されたコラムを、こちらでも共有します。
以下は、近畿大学宮部浩幸研究室+東北芸術工科大学馬場正尊研究室+OpenA によるアイデア集です。
「NewNormal コロナ後のまちと住宅とオフィス(住宅編)」
text=宮部浩幸(SPEAC)
with/afterコロナのまちと住宅とオフィスはどうなっていくのだろう。
近代化以降、まちも住宅もオフィスも仕事を会社ですることを前提に計画されてきましたが、その前提が変わりつつあります。一方で社会に横たわる多くの問題はウイルスが解決するものではないというのも事実です。
世界が同時に同じ問題に直面するなんてことは一生のうちでも滅多にないことです。だからこそ、この機を捉えれば、自分たちの暮らしをポジティブにアップデートできる気がします。そんなことを思いながら、大阪と山形の大学生が集まったオンラインゼミから出たアイデアを紹介します。
①ワークインクローゼット
ワークインクローゼット(WIC) 家族のいる家で集中して仕事をするとなると、一人になれる場所がほしいですね。TV会議のときは家族の出す音が気になります。背景に映り込む部屋もどうしたものか。そんな悩みを解決するために、家のどこかをワークスペースに改造したい。
そんなことを考えて出てきたのが、クローゼットをオフィス化してしまおうというアイデア。物を置く場所、洋服をかける場所もTV会議での映り込みを意識しています。ここなら家族の映り込みの心配も少ないですね。こもれる場所で集中力がアップしそうです。プチリノベするならWIC。
②ガレージオフィス、縁側オフィス
ガレージオフィス 縁側オフィス うちにはウォークインクローゼットはないよという人は、ガレージや縁側を見直してみてはどうでしょう。縁側は外の様子も見える一等席です。ここに机をセットして電源をもってくれば、気持ちのいいパーソナルオフィスです。
家の中はごちゃごちゃしているけどガレージはガラーンとしている人はそこが狙い目です。スティーブ・ジョブズがアップルを創業したのは家のガレージです!ものすごいアイデアが湧いてくるかもしれません。
③家の中のちょっとした場所をオフィス化(窓辺、階段下、押入れなど)
窓辺、階段下、押入れなど… まだまだ、使える場所はあるかもしれません。窓辺、階段の下、押入れ。小さな机と椅子をもっていって居心地を確かめてみましょう。DIYでカウンターをつけてみても良いと思います。
④お風呂で仕事
お風呂で仕事 限られたスペースの家の中で、昼間はほぼ使っていない場所がお風呂。ここを占拠してオフィス化できるようになったらいいのかも。TV会議もバッチリ?音が響くのが玉にキズ。考案者の学生はオンライン授業を風呂場で受けてみたとか。
⑤土間オフィス
土間オフィス 土間オフィス これから自宅を建てる、リノベするのであれば、広めの土間がほしいです。玄関を入ってすぐのところで在宅ワーク。オンラインはもちろん、お客さんが来るとなっても、家の中のごちゃごちゃを見せることなく対応できそう。ちょっと大きめの洗面カウンターもつければ毎日の手洗いうがいもバッチリだし、アウトドアグッズの手入れにも便利だろうな。
⑥大人用二段ベッド、寝床とワークスペース
大人用二段ベッドで、寝床とワークスペースをつくろう 家で二段ベッドというと子供用のイメージですが、大人用を考えてみました。上の段を寝床でリラックススペース、下の段はワークコーナーとして、寝室をワークスペースとして有効活用。ワンルームの人にも良さそうです。
⑦マンション共用部をソロワーク向きのワーキングスペースに
マンション共用部 マンションの談話室や会議室って稼働が低いですよね。僕の住んでいるマンションにはめったに使われないガラーンとしたプレイルームがあります。そこの一部でもTV会議ブースのあるソロワーク向きのシェアスペースにできれば、完璧な職住近接でこれまで以上に快適に暮らせそうです。大きめのマンションにはお宝空間が潜んでいる可能性が高いです。
コロナ後の住宅の変化は家の中からじわじわと
コロナ後の住宅の変化は、家やマンションの内側からじわじわと起こり始めているようです。この変化の先に、これからの住宅のスタンダードといえるものがあるかもしれません。
一方で暮らしは家の中だけでは完結しません。家と近所のまちをうまく使いこなすことが、この先楽しく暮らしていくことの秘訣。コロナ後のまちの変化にも注目です。
ディレクション:宮部浩幸+OpenA
オンラインゼミ:近畿大学宮部浩幸研究室+東北芸術工科大学馬場正尊研究室+OpenA
テキスト:宮部浩幸(SPEAC)
イラスト:オノタツヤ
宮部 浩幸プロフィール
1972年千葉県生まれ。建築家。博士(工学)。SPEAC / 近畿大学准教授。作品に「リージア代田テラス」、「龍宮城アパートメント」など、著作に『リノベーションの教科書ー企画・デザイン・プロジェクトー』『世界の地方創生』(どちらも共著 学芸出版社)など。
【同時公開中!】「コロナ後のまちと住宅とオフィス」シリーズ
R不動産のグループサイトで、関連コンテンツを掲載しています。
・東京R不動産で、建築家/東京R不動産ディレクター 馬場正尊によるコラム「見えない災害の時代の考現学」を公開中です。
・使われなくなった公共空間の情報を市民や企業とマッチングするためのウェブサイト、公共R不動産で、コラム「NewNormal コロナ後の街・住宅・オフィス(街編)」を公開中です。
・R不動産発、新しい働き方・営み方を実践するメディア「REWORK」で、「NewNormal──コロナ後の街・住宅・オフィス(オフィス編)」
を公開中です。
・リアルなローカルを発見するサイト「real local」で、神戸R不動産・小泉寛明によるコラム「在宅勤務先進都市化計画をはじめよう」を公開中です。
・real localのYoutubeチャンネルで動画「【動画】在宅勤務と副業が住を自由にする? アフターコロナの新・移住論(南八ヶ岳×神戸×福岡)」を公開中です。
NewNormalの全体イラスト
オノタツヤ氏によるNewNormalのイラスト。細かいところにいろいろなアイデアをちりばめたのでぜひクリックしてご覧ください。
※クリックすると拡大してご覧になれます。