2017.11.27 |
金沢リノベーションまちづくりシンポジウム・レポート 第3回 「新しい金沢の見方」を抽出する柳田和佳奈(金沢R不動産/E.N.N.) 金沢の中心部に点在する遊休建築物をいかに活用できうるかを考え、またそれらを点として捉えるのではなく、商店街や街区といった面的なイメージで、地域の更新を行っていくことが重要では。そうした意識のもと開催された「金沢リノベーションまちづくりシンポジウム」(2017年4月8~9日)。最終回となるレポート3回目は、各エリアへの提言と総括を。 今回は、2日目のワークショップ後、各チームのプレゼンテーションを受けた上で、コーディネーターの馬場正尊(OpenA代表/東京R不動産)と、徳田光弘さん(九州工業大学准教授/一般社団法人リノベーションまちづくりセンター代表理事)による講評からお届けします。 「小さな商い」で多様性を育てる 【片町・竪町チーム】 馬場:竪町の商店街は家賃が高止まりしていて、新しい人が事業を起こしにくいという課題がありました。「だったらもう一度、屋台感覚で小さくビジネスを始められる街としてやりなおそうぜ」っていうのがこのチームの提案でしたね。 徳田:竪町の商店街では道路と店舗の間に、言うなれば「私有地の公用空間」のようなスペースが形成されている。そういう点では、道路の使用許可を取ったり面倒な手続きをパスして、ゲリラ的に屋台やイベントを展開しやすい素地がありますよね。 馬場:シャッター前とか軒下とか、道路とお店の中間みたいなスペースを貸し出して、若い人たちが変わった商売を始められるフィールドにする。そのために行政が規制を緩和していくーー。そういった実験が竪町で行われると、日本でもあまり見たことない風景が生まれそう。そうしたら、かつて全国から視察が来るほど最先端を走っていた竪町商店街が、もう一度「一番新しい商店街」になることができるんじゃないかな。 「イメージの共有」から街を変える 【尾張・橋場町チーム】 馬場:「尾張」という町名が付くくらいだから、この界隈は歴史的に「位が高い」エリアなんでしょうね。だからこそ、物件を所有しているオーナーさんたちに、「金沢の中でもここは歴史的に重要な街なんです!」ということをもう一度思い出していただく、意識づけから始める、という今回の提案はお金もかからないし現実的だなと思いました。今すでにある、ブランディングのきっかけになるようなスポットに光を当てていて、駐車場やマンションが増えることを必ずしも否定していないところも含めてね。 歴史的な建物を壊して駐車場やマンションにする以外の選択肢を、ムーブメントの実践を通して地域に与える。そのためには、エリア全体のブランディングが必要になってきます。尾張・橋場エリアは歴史の文脈から考えても、商いやものづくりが盛んなエリアだったわけで。「工芸」というのは、金沢におけるひとつのキーワードだから、空き物件がクラフトにまつわるスポットに変わっていけば、エリア全体のブランドイメージをつくっていけると思うんです。 徳田:駐車場は1台当たりの賃料単価まで計算できるはずだから、例えばその駐車場に1台分の収益を超えるコンテナショップをはめ込めば、新しい駐車場風景を創出できるかもしれませんね。長野の善光寺前や東京のCET*エリアで起きたような変化がここでも起きれば面白いなと思います。馬場さん、ここで「CET」についてちょっと説明をお願いします。 CETがやったことは、まさにエリアのブランディングだったわけです。神田も日本橋も、もともと問屋街で倉庫的な建物が多いことがあり、アートやクリエイティブ関連との相性が良かったわけですが、CETを通して改めてサブカル系のエリアとして認識されるようになって、ギャラリーや雑貨店、美容院といった個人店がダーッと流れ込んできた。 街の変化は可視化してこそ 【石引商店街チーム】 馬場:石引エリアは、RCの防火帯建築が物件としてもモテそうだし、このチームの提案はすぐにでも実現できそう。これはもうやっちゃった方がいいんじゃないでしょうか。家賃3~4万だったら、作品が3、4個売れれば学生でも払えちゃうし、美大があるエリアならではの提案だと思います。街中アートにしちゃうっていうのも夢ではないよね。街が変わっていくインパクトは、外から見てもわかるようにした方がいい。そうすることで短期間でのブランディングも可能になると思うんですね。あと、金大付属病院前の広場とか、昔ながらのパーキングとか、ちょこちょこあるスペースをオープンな場としてインパクトある使い方ができないかな? 地元の不動産屋さんと、金沢R不動産と、美大が協力して、CET並みの大ムーブメントを巻き起こすっていう。 新しい金沢の見方を抽出して、街を更新し続ける 馬場:では最後に総評を。今回、短い時間でのワークショップでしたが、だからこそエッセンスが凝縮されていて、どのチームもシャープな提案で良かった。倉石さん、新田さん、岸本さんの3人のモデレーターも、理論派より行動派ばかりだったので、明日から第一歩が踏み出せそうな具体的な形にまで仕上がっていましたよね。僕は何よりそこが大切だと思っています。考えながら、まずちょっと動いてみる。ちょっと動いてみると反応があって、変化が生まれる。その「ちょっとの変化」がまた次の変化を生むーー。すると、いつのまにか雪ダルマ式に、物事が動いていくということがありますし、僕自身何度も体験してきました。 |
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