2011.12.25 |
茨木町アパートリノベーション リノベーションアパート“鞍月舎”のその後(後編)松本ゆうみ(金沢R不動産/E.N.N.) 茨木町リノベーションアパート“鞍月舎”のその後を追うコラム。後編は1階に入居されている3つのショップをご紹介! 今春完成した茨木町のリノベーションアパート「鞍月舎」のその後を追うこのコラム。前編では、2階のお部屋をそれぞれアトリエ、オフィス、サロンとして使っている4人の女性にスポットをあてましたが、後編では1階に入居されている3つのショップについてご紹介します。そう、1階もそれぞれ個性的なお店が並んでおもしろい場所になっているんです。私たちのオフィスからもすぐ近くなのでよくお邪魔しているのですが、今回改めてお話を伺ってきました。 1-a号室/ 「橘珈琲店」 まず最初にやってきたのは、自家焙煎珈琲が自慢の『橘珈琲店』。扉を開けると、ふわーっとコーヒーのいい香りが漂ってきます。取材に来たにもかかわらず、 ついつい腰を落ち着かせてコーヒーを注文。2階でアトリエを構えるクチュリエの木谷さんも仕事の息抜きに降りて来られたので、一緒にコーヒーを飲みながら 話を伺うことにしました。 「今日のグァテマラはねぇ、かなり深めに煎ったからコクがあってツウ向きかもしれない。フルーティーなのがよければエチオピアかな」と、豆のラインナップと味の特徴を丁寧に教えてくれる店主の橘さん。コーヒーに対する知識はとても深く、聞けば小学生の頃にすでにネルドリップを習得して、高校生になると複数の豆を買ってきてはオリジナルブレンドの研究をしていたそう。馬術のインストラクターという職に就いてからもコーヒーへの探究心はますます高まり、手作りで焙煎専用の小屋を建てたり、ベーカリーに自家焙煎の豆を卸したりとずっとコーヒーと関わってきましたが、今秋趣味をいよいよ本業に。それだけにこぢんまりとしたお店の中にはこれまで蓄積されてきたコーヒーに対するこだわりがたっぷり詰まっています。 裏路地にあるので人通りはまだあまりなく、ふらっと入ってくるお客様は少ないとのことですが、サラリーマンやOLさん、近くの放送局のアナウンサーさんらからお店の評判はクチコミで広がっているようです。朝早く通勤する方向けに営業時間前(8時頃~10時)にテイクアウト限定で安くコーヒーを提供したり、自宅や職場でも美味しいコーヒーが飲めるように自家焙煎豆のドリップパックを販売したりと、お客様の声に応えるような新しいサービスも生まれています。街に根づき愛されるお店というのは、そういうこだわりと柔軟性を併せ持ったお店なのかもしれません。 1-c号室/ 「輪島キリモト・金沢店」 次に向かったのは『輪島キリモト・金沢店』。輪島市で江戸時代後期から続く漆器の製造販売元であり、普段づかいできる漆器や漆を使ったインテリア小物や家具など、今の暮らしの中に溶け込む漆製品を提案する桐本木工所のショップです。日本橋三越にも『輪島キリモト』の店舗がありますが、金沢店では単に漆製品の販売だけにとどまらず、地元輪島の特産品を扱ったり、漆のことを深く知ってもらうためのワークショップを開催したりもしています。 店員さん(オーナーの妹さん)と話をしていると、ここでもいい出会いがありました。お店に入って来られたのは、昼休み中だという市役所職員の男性。そういえば、金沢市役所からここへは徒歩で5分程の距離。食後の散歩で今日初めて立ち寄ってみたとのことでした。なんと偶然にも地元が輪島市ということで、会話は自然と輪島の街の話題に。ポテンシャルの高さが注目されている能登輪島で生まれはじめた若い動き、一方でそれでもまだ寂しい街の現状を聞くと、輪島ブランドの代表格である“漆”の役割、そして『輪島キリモト』が絶えず発信し続けていることの意味を実感することができました。 漆器が陳列された棚の一角をふと見ると、そこにはスタッフさんが作った「金沢の地図」と「輪島の地図」が。金沢店と輪島の本町店・工房のそれぞれ周辺にあるおすすめショップや飲食店がまとめられたものです。これ一つとっても、この店だけでなく街全体を盛り上げたいという想いが伝わってくるようでした。 1-d号室/ 「HACO:ya」 続いては、お隣にある『HACO:ya』へ。ここは普段商品パッケージとして使われている箱の更なる可能性を探って販路拡大や産業創出を目指すため、箱屋さんが運営しているギャラリーです。そのため、店内に並んでいるのは販売している商品ではなく、展示用の作品やワークショップの見本品。フタ部分が黒板になったチョークBOXや大きなクリスマスツリーなど、「箱ってこんな風に使えるんだー」と驚かされるものばかり。同時に「じゃあ箱でこんなこともできるんじゃない?」なんて新しい発想も湧いてきます。 私たちはここで定期的に行われている筆箱とティッシュ箱を作るワークショップに参加させてもらいました。まずはたくさんある古着と洋紙の中から好きな色柄を選んで、型に合せて切ったあと、箱の形に組み立ていきます。一番難しいのは最後にニカワ(動物の骨や皮から作られた糊)を塗って布や紙で箱をくるんでいく、貼箱ならではの作業。2人のスタッフさんに丁寧に教えてもらいながら、オリジナルの筆箱とティッシュ箱がそれぞれ1時間程度で完成しました。自分だけの世界に一つしかないものと思うと、とても愛おしくなります。 商品を購入するのではなく、発想を享受して創造する場。ここには訪れた人と迎える人とのコミュニケーションがあり、新たな相乗効果を生む場所にもなっていました。 鞍月舎のショップ第1号である『輪島キリモト・金沢店』がオープンしたのが今年の5月末。9月に『橘珈琲店』、10月に『HACO:ya』と相次いでオープンしたので、まだ2ヶ月程しか経っていませんが、それぞれのお店が街に根づき、出会いと出会いをつなぐハブ的な場所としても機能しつつあるのを感じました。 |
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