漁期は12/29まで!香箱ガニの愉しみ方
毎年11月6日を境に、金沢人のフェイスブックは紅色に染まります。
というのも、11月6日が石川県のカニ漁の解禁日。この日から市場や飲食店のメニューにカニが並び出し、「これを食べねば冬が始まらない!」とばかりに、こぞって暖簾をくぐるのです。タイムラインは「サムライブルー」ならぬ「カニレッド」一色。
しかし、アップされている写真の多くは、足を食べるような大きなカニではなく、手のひらサイズの小ぶりなカニ。
そう、金沢ではいわゆるズワイガニ(石川では加能ガニと呼ぶ)よりも、小さな「香箱ガニ」をありがたがるのです!
昔はおやつ代わりに食べられていたとか。今ではちょっとした高級品。 「香箱ガニ」とはメスのズワイガニのことで、「セイコガニ(福井)」「コッペガニ(丹後)」など地域によって呼び方は違います。しかし“香箱”とつけるあたり、茶の湯文化が浸透している金沢らしい風情があり、さらには香箱ガニの楽しみ方を象徴した、実に秀逸なネーミングだと思うのです。
写真上部の黄土色をしたプチプチの集合体が「外子」。ミソと絡めてある鮮やかなオレンジ色の物体が「内子」。 「香箱ガニは、身よりも内子・外子を楽しむもの」というのが金沢の人の香箱観。ちなみに、内子とはカニの卵巣のことで、外子は腹部にある卵のこと。
外子はプチプチと弾ける食感がたのしく、内子はホロリと崩れ、えも言われぬ濃厚な旨味が。カニミソとの合性も抜群。ちょっとずつ、ちびちびと大切に、熱燗などと一緒にいただきます。
駅前の「くろ屋」さんにて。盛りつけの美しさも、香箱ガニの「美のツボ」。 近江町市場近くの和食店「馬数」さんで。今年の「香箱初め」はこちらでした。 さらに、茹でたカニをそのまま出すのではなく、内子・外子、そして細い脚の身まで、綺麗に剥いてお出しするのが金沢マナー。甲羅に美しく身やミソを盛られた様は、まさに宝石箱…いえ、「香箱」と呼ぶに相応しい佇まい!
市内の飲食店でも、この時期はひたすら香箱ガニを身剥きする「香箱要員」が出動するところもあるほど。
「活ガニの状態で茹でなだめや!」など、魚屋も料理店も、香箱ガニには並々ならぬ情熱を傾けています。写真は近江町市場の島田水産さん。 香箱ガニはその繊細な味わいゆえ、下手なところで食べると、水っぽかったり、旨味がなかったりでガッカリすることもあるので要注意。そこで、我々スタッフがこれまでに“間違いなかった香箱ガニ”にありつけたお店を系統別に一部リストアップ。福井のように「カニ専門店」があるわけではないので、金沢の美食店リストとカブッってはしまいますが…。
※留意点:香箱ガニは常時お店にあるものではないので、「香箱ガニを食べるために金沢に行く!」という方は、必ず事前に予約なさってください。(漁期は12月29日まで!)
【和食店系】
面盛り(茹でて剥いた身を殻に盛ったもの)が最もベーシックな香箱のいただき方。
旬房さかい
酒屋 彌三郎
いたる
くろ屋
旬菜 馬数
こちらは「旬房さかい」さんでいただいた面盛り。 【おでん屋さん系】
金沢特有のおでんダネ・カニ面。いわば「面盛り」をおでんにしたもの。1,000〜2,000円くらい。
赤玉 金劇パシオン店
おでん 高砂
おでん 美幸
ちくわ
こちらは内子も身も混ぜ合わせたタイプのカニ面。 こちらのカニ面はお腹の殻までかぶせてもらっている。可愛らしい。 【お鮨屋さん系】
つまみの一品として出されたり、美しき創作握りとなっていただけたり。
太平寿し
乙女寿司
鮨 みつ川
太平寿しさんでの一品。
繰り返しになりますが、加能ガニ(オス)の漁期が翌年3月20日なのに対して、香箱ガニはぐんと短く、12月29日まで。この刹那!
みなさまが美味しい香箱ガニにありつけますように。それではグッド・カニ・ラック!!