2010.2.9 |
Rトピックス 手仕事のまちの町家が工房になりました金沢R不動産 「プレーンな町家」というタイトルで紹介していた物件が工房へと生まれ変わりました。 本物件のオーナー涌田さんから物件掲載のご依頼を受けたのは今から1年ほど前のこと。特徴的な物件だったので何かに変わりそうな予感はありましたが、これほどまでに変わるとは、正直なところ想像がつきませんでした。 この物件に出会ったきっかけは以前のコラムでも紹介した「町家巡遊」というイベントの中でオーナーの涌田さんと出会ったことでした。「古い建物があるのですが、見ていただけますか?」と連れていって下さったのがこの物件。縫製工場として使われていたこともあり、余計なものが無く、生活感も無いがらんとした内部が特徴的でした。よくよく調べると江戸末期に建てられた古い歴史もある。住空間よりもアトリエやオフィスになると面白そうな予感がして、このままの状態で、その代わり改装OKという条件で募集を開始し始めました。 元々工場として使われていた経緯と、当時のがらんとした空間はやっぱり工房に向いていたのかもしれません。金沢には多様な伝統工芸の形があって、貸し工房とするには、なるべく様々な形に対応できるシンプルな空間がよいはず。個人の作家さんでも持て余すことが無い、こぢんまりとした大きさも今回のプロジェクトにぴったりはまるようで、何度かの現場確認を繰り返し、思いのほかスムーズにこの物件が候補として進められることが決定しました。その報告を都内に住む涌田さんにした時の「嬉しいですねえ!」という、電話越しでもはっきりわかる嬉しそうな声が今も印象に残っています。 改修と同時に、利用者の公募が市のHPを通して行われていきました。最初の利用者として選ばれたのは金工作家の秋友美穂さん(名古屋市出身。金沢美術工芸大学美術工芸研究科彫金コースを卒業後、卯辰山工芸工房を修了し以後金沢を拠点に活動)。 年明けには涌田さん家族や入居者の秋友さんを始め、関係者の皆さんで完成祝いも兼ねて新年会をすることになりました。長い間空いていた建物に明かりが灯って、改修した際の苦労話や建物の思い出、そしてこれから利用していく秋友さんの思い、いろんな話をしながら時間が過ぎていきます。 見ていて微笑ましかったのは、涌田さんのおばあちゃんと秋友さんの祖母・孫のような関係。「大家といえば親同然、店子といえば子も同然」。たぶん、この町家が建てられた当時はそういう関係が今よりもずっと濃く残っていたんでしょう。こうしたハッピーな関係が、きっと建物や地域を生き生きさせていくのだと思います。 後日工房にお邪魔すると、子供を連れた近所の方と話す秋友さんの姿がありました。ご近所さんからすると、あまりにも馴染みがありすぎて逆に元の姿を思い出せないのだとか。それでも、以前より生き生きとした建物にはやっぱり惹かれるものがあって中も気になる様子。そんな来客を迎えながら製作していけることが秋友さんはとても嬉しそうでした。 昔から、もののパワーはすごいですからね。秋友さんを初めとして、この建物でいろんな作家さんがものを作って、その音が小気味よく町に響いていくとすると、今とはまた違った街並みに変わっていくかもしれません。 ■金澤町家職人工房「東山」
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