「東京の物件も面白いですけど、金沢の物件もとても面白いですよ。一度見に来ませんか?」
金沢でNPO「v.i.v.a.」に参画している建築家の小津誠一さん(studio KOZ.)から、ある日こんなメールがきました。
確かに、加賀百万石の城下町。レトロ物件は多いはず。それに、「水の都」金沢だったら川沿い物件もありそうだし……。ということで、行ってきました。金沢へ。
結果から先に言うと、とても面白い!! 東京ではなかなか見つからないような物件がごろごろしていました。そこで、そんな金沢の物件調査を兼ねた旅のレポートをお届けします。
まずは、上の写真をご覧ください。
レトロというか、歴史建造物がごろごろしています。これ全部、金沢市中心部にあるんですよ。
当然のことながら、観光資源になっていて借りられないものも多いのですが、中には賃貸可能な物件もちらほらある。
基本的に、賃料は普通のマンションと大差ありません。地元の人に話を聞いていくと、どうやら街中に住むよりも街の中心部から離れたマンションに暮らし、移動は車で行うというのが一般的だそうです。東京で仕事をしている僕らからしてみれば、もったいない限り。 こんな物件で、シェアしながら仲間で遊べる場所とか作ったら本当に楽しいんですけどね。
と思っていたら、やはりそんな活動をしている人たちがいらっしゃいました。
1件目は「KiKU」。
grafのデザインによってリノベーションされた後、ちょっとずつ借主が手を入れている古い長屋で、現在は店舗兼ギャラリー兼事務所として使われています。指輪職人の竹俣勇壱さんがつくったアクセサリーや小物のほか、漆器やガラスの器などを取り扱っています。指輪はオーダーメイドのデザインでつくってくれます。
この物件のポイントは畳のロフト部分。打ち合わせや商談用のスペースとして使っているそうですが、ただひたすら居心地が良いスペースです。やはり、日本人は畳だなと思ってみたり。
また、面白いのはこのお店がある「新堅町商店街」の成り立ち。かつてはさびれた商店街だったのですが、ここ数年間で雑貨、アパレルのお店ができ始め、とても雰囲気のいいストリートに生まれ変わりました。昔からのお店もありつつ、若い人が行くことができるお店もあり、何かすごくのんびりとした空気が流れている、そんな場所です。
ちなみに、この「KiKU」さんの商店街を挟んで向かいには「レジスタン」という、BENLLY’Sの姉妹店の雑貨屋さんもあります。こちらも雰囲気、商品のラインナップがかなり良いのでぜひチェックしてみてください。
2件目は、「factory zoomer/shop」。
川沿いにあるこちらは、とてものんびりしていて雰囲気のある、一軒家を改装して作ったギャラリー兼ショップ兼カフェです。1階はガラス作家の辻和美さんの器が並び、2階はギャラリーとして使用されています。おすすめは、ここのコーヒー。美山でコーヒーの焙煎販売を行なっている大家さんの豆を使ったコーヒーを、辻さんの器で飲む。目の前には犀川。幸せですね。
この物件は、1年ほどかけて辻さんの旦那さんが個人で改装した力作。電気工事等、最小限の工事は業者に発注しましたが、それ以外のほとんどすべての工事を旦那さんが仕上げています。ホームセンターを使い過ぎて、最後にはお店の人に業者だと勘違いされてしまったほど。ちなみに、工事費はほとんど材料代のみで100万円だそう。こちらも驚きです。
目の前には川が開けている。 最後にもう1件。今回ナビゲートしてもらった小津誠一さんの経営されているレストラン・バーの「a.k.a.」をご紹介します。こちらは金沢中心部の片町。金沢の地場の素材をくずし京懐石の手法で仕立てた創作料理が楽しめます。しかも、値段がとても安い。やはり、地方に行っての楽しみといったら食事ですよね。
「a.k.a」。小津誠一さんの経営されているレストラン。 空間は小津さんのデザインで生の木を使った贅沢な作り。飲み屋街の真中にあるぼろビルをリノベーションして作られました。もとはよくある風俗関係の雑居ビルだそうです。改装でこんなにステキな空間になるのかとプロの僕たちもびっくりしてしまいました。
ちなみに、地下には「v.i.v.a.」の運営しているお惣菜バー「puddle」とイベントスペース「social」があります。こちらも小津さんのデザイン。とても居心地のいいスペースなのでおすすめですよ。
金沢で味わいのある古い物件をうまく使って住んで、またお店をのんびり営みつつ、ネットで全国の人にも商売をする。こんな暮らし方っていいですよね。東京であくせく働いている僕たちが馬鹿らしく思えてきます。
安いし静かだし、自然もたくさんあるし。こっちでレトロ物件を借りてゆったりライフを楽しむというのはありかもしれませんよ。