観光地として人気の茶屋街のそば、もと金物店だった町家を複合ショップにリノベーションするプロジェクトが進行中!
過去と現在が同居するまち「尾張町~橋場町エリア」
来春の北陸新幹線開通を控え、金沢駅周辺の再開発商業エリアや、観光地としてのひがし茶屋街などに注目があつまる金沢。そんな局地的な新幹線ムードに沸く金沢駅とひがし茶屋街を繋ぐ線上に、立地的にも歴史的にも魅力をもった「尾張町〜橋場町」エリアがある。
金沢駅~ひがし茶屋街を繋ぐ線上に位置する尾張町エリア。浅野川や近江町市場、金沢城などにも囲まれる。(画像 ©2014 Google)ここは、明治初期までは、国内5番目の人口を誇る都市として栄えた金沢の中心地だったエリアだ。いまでも点在するように残る大きな古い商家の町家やモダンな洋館などが、この地のかつての賑わいを想像させてくれる。
かつて金沢経済の中心地だった名残を伝える大型商家やモダンな建造物達。戦災を受けていない金沢中心部は、藩政期の城下町金澤と現在の金沢のまちのつくりには、大きな変化はない。だから、表通りでも裏通りでも、古い建物や遺構などをヒントに過去と現在が錯綜した体験ができる街で、ひとの営みやまちの賑わいを重ね合わせて想像してみると、僕たちの目の前にあるまちが少し違って見えてくるから面白い。
さらに、それらを未来のまちとしてイメージしてみると過去から未来へと継承されていく都市「カナザワ」が鮮やかに眼前に広がっていく。そんな妄想ができるのも金沢の魅力だと僕は思っている。
過去から未来へ継承する町家「旧志村金物店」
さて、そんな妄想のピースを現実にしてくれそうな尾張町〜橋場町エリアの町家が僕たちの前にあらわれた。橋場町交差点近く浅野川大橋の袂で個性的な銅板貼りの看板を掲げる大きな町家だ。
創業当時から変わらない存在感抜群の銅版貼りの看板。ある人の紹介でこの町家オーナーの志村様とお話しする機会を得た。長らく続けてきた金物屋のご商売をリタイヤして、近隣に新築中の住宅に移り住むという。土地はご子息に相続されることが決まっている。できれば、町家も残したいがだれに相談すればいいものか、借り手がいるものなのか漠然と困っているようだった。そこで僕たちは、この町家の活かし方を提案し、借り手も探すことと申し出ることとなったのだ。
そして、この町家の引き継ぎとリノベーションへの協力要請に、二つ返事でいいね! と親指を立ててくれたのが、この町家リノベーションの事業主となる早川和良さんだ。早川さんは、金沢美術工芸大学を卒業後、都内で有名企業のCM制作に携わり、JR東海のCMクリスマスエクスプレスなどを手掛けた方だ。一方で、学生時代を過ごした金沢への愛着から、ご縁は続いており、一棟貸しの町家「菊乃や」のオーナーでもあり、最近は石川県の観光総合プロデューサーとして「ひゃくまんさん」のプロデュースも手掛けている。
さて、この町家、屋根裏部屋付きの木造二階建てで、増改築を重ね100坪を超える町家だ。
主計町茶屋街に隣接した浅野川大橋詰めの大通り沿いに建ち、ひがし茶屋街からも徒歩圏内の好立地で、観光客の印象にも、住民の記憶にも残るインパクトの大きな町家である。
建物の中へと目を移すと、商店として使われてきた大きな土間空間が広がり、そこには二階建て土蔵まで建っている! さらに奥へと進むと、中庭や生活空間として茶の間や納戸などが連なる。二階へと上がると、複雑な増改築の名残もあって、まるで迷路のような町家となっている。
なかでも面白いのは、中庭の足元、つまり建物の地下に浅野川へと注ぐ用水が流れていて、金沢城下を取り囲む外堀「惣構掘」の石垣が建物の中を横断していることだ。まさに江戸時代からの遺構と一体化した珍しい町家なのだ。
商店として使われていた土間や蔵、3階の屋根裏スペース。地下には「惣構掘」の石垣も!茶屋街に代表される歴史的景観保存地区に隣接するこのエリアは、観光需要も高く、商業地域でもあるのでコインパーキングやテナント付きマンションへの建て替えも盛んな場所だ。まさに、保存と解体の分水嶺とも言える立地環境でもあり、今後の町家リノベーションの方向性を示す好例となり得る建物でもある。
すぐ傍は主計町。対岸にはひがし茶屋街。観光資源が多く古家を潰しコインPにするケースも多い。ヒト・コト・モノが集まる「八百萬本舗」リノベーション
この町家に新たな価値を与え、まちや建物の歴史を継承して未来へと繋げていくために、「八百万のヒト・モノ・コトが集まる場」づくりをコンセプトとしてリノベーションすることにした。
この規模の町家を一つのテナントで独占するよりも、コンセプトを共有する複数のテナントが集まる場として活用した方が、より開かれた町家として存在価値が高まると考え、複合的な施設を目指すこととする。
テナントは、石川・金沢の現在形の物産を伝えるショップが集まる予定だ。具体的には、伝統的技術に基づく革新的な商品、能登や北陸のセレクトグッズ、地場産業がうみだす生活用品、地域を意識したカフェスタンドなどが集う予定で、すでに興味をもって頂いている数店と計画がスタートしている。
また、エリア情報の収集と発信を行う場としてコンシェルジュスタッフが常駐し、ワークショップやトークショーが開催され、実験的なポップアップストアなどが出店する。
ここは、決してノスタルジックな町家の土産物店ではない。新しくてリアルなローカリティを伝える場として、創造と発見、交流のあるパブリックな町家を目指していくことになる。
コンセプトを共有する複数のテナントが集まる場として今後リノベーションしていく。
新しく命名された「やおよろず本舗」ロゴ東京であれば、新築の再開発ビルに全国のコンテンツを集めてくるかもしれないけれど、ここ金沢では歴史と物語のある町家を再利用して、すでに地域にある個性を集めるだけで歴史を継承し物語を創造していくことができるに違いない。そんな妄想を現実化するのが「八百萬本舗」だ。
来春、新幹線需要で観光客賑わう金沢のなかで異彩を放ち、新たなエリアの可能性を感じさせる新しい場としての開業が今から待ち遠しい。
来年2月末頃openに向けて急ピッチで工事が進む。一部シェアスペースやテナントスペースを追加募集する予定もあるので、ご興味ある方は金沢R不動産までお問い合わせ頂きたい。